シンガポール会社設立.com

シンガポールでの会社設立、運営、その他日々の生活について書くブログです。

さて、前回記事ではシンガポールでの会社設立の必須要件を議論してきました。今回はそこから、日本人/日本の株式会社が実際にシンガポールで法人(Private Limited)を設立する際、何に特に注意をしないといけないか、掘り下げてみます。

実はシンガポールは、政府を挙げて世界中から企業を誘致しています。例えば、Jetroではこのように解説されています。技術や知識を持った貴重な人材が入って来やすいようビザ発給の仕組みを整え、研究機関や研究資金等の受け皿を用意し、そして、外国人も会社を設立しやすいように法律やオペーレションが整備されているのです。従い、基本的にはかなり容易に会社が設立できると思って差し支えありません。※特に外国人が日本で会社を設立する苦労を考えると、極めて簡単です。こちらでは、 日本人の雇用や費用支出についての実質的なハードルがあることに触れられています。私も調べたわけではないので確たることは言えませんが。

さて、さはさりながら、シンガポールという異国の地で会社設立というのは、当然それなりにドキドキするプロセスです。少しでも安心頂けるよう、ポイントを列挙します。


1)信頼のおけるLocal Director(ローカルダイレクター、現地取締役)を見つける

ローカルダイレクターが一人以上いないと、シンガポールでは会社が設立できず、また維持できません。一番簡単なのは、Secretary Firmや会計事務所等から、会計士をプロとして雇い入れることです。この場合、ローカルダイレクターとして取締役になる方は”Nominee Director(ノミニーダイレクター、名義貸し取締役)” と呼ばれ、実際の取締役会での決議には参加せず(他取締役を追認するのみ)、業務も行いません。メリットは、妙なことをされるおそれがないこと、デメリットはコストがかかることです。

二番目は、友人等で名義を貸してくれる人を見つけることです。注意しないといけないのは、名義貸しとは言え、法的な責任が発生することです。仮に会社が何らかの咎めを受けることになったり、弁済や債務が発生した場合、その友人にも迷惑がかかります。逆も然りで、その友人が何らかの問題を起こすとそれも会社に帰ってきます。メリットは、コストがかからないこと、デメリットは関係の無い人をビジネスに巻き込むことです。

三番目は、現地パートナーや従業員をローカルダイレクターにすることです。これも2番めと同じリスクを抱えます。より経済的なつながりで人を巻き込むため、 よっぽど信頼できる人でないと、金銭的なトラブルに繋がる恐れがあります。それを見越して、契約などでがっちり縛る・・・ということになると、結局法務等のコストがかかり、プロを雇う方が安く・簡単に済むかも知れません。

上記のように、ローカルダイレクターを押さえるというのが最初のハードルです。一旦会社が設立できれば、現地に駐在する日本人取締役がその会社に雇われる形でEmployment Pass(EP、就労ビザ) を得て、その会社のローカルダイレクターとなることができます。上記ローカルダイレクターは会社を設立して、EPを受け取るまでの一時的な策とする方が良いでしょう。もちろん、信用できるローカルダイレクターを得ていれば、そのまま協力を仰ぐのは問題ありません。


2)銀行口座開設

ビジネスを進めていく上で欠かせないのが銀行口座です。しかし、現在シンガポールでは法人口座の開設がシビアに審査されます。これは、非合法な取引を未然に防ぐ目的で、規制が強化されているからです。

シンガポールは法人税率が極めて低い(最大で17%)ため、脱税目的で資産をシンガポールに逃避させるケースがあるため、そうした実態の無い、脱税口座/トンネル会社を作らせないようにしています。また、シンガポールは金融センターでもあり、資金を移すのが容易に行えます。海外送金、海外送金の受領、何れも非常に簡単かつリーズナブルにできます。その利便性が、マネーロンダリングにも使われる恐れがあり、シンガポール政府はこうした非合法取引に目を光らせ、金融センターとしてのポジションに傷がつかないよう、銀行を規制しています。

そうしたシビアな銀行の審査をパスして口座を開設するには、どういった要件があるのでしょうか。残念ながら、銀行側は公にはしておらず、推測するしかありません。私の経験に基くと、一つは資本金です。十分なお金が無いと銀行としての収益が上がる可能性もありませんので、資本金が少ないケースでは開設を拒否されることがあります。

もう一つはバックグラウンドです。例えば、小売業の会社と、金融業(トレーディング)であれば、どちらがマネーロンダリングに使い易いか一目瞭然、金融業です。この場合、参照できる資料(例えば親会社、株主、取締役のバックグラウンド、日本での登記簿謄本や事業実態説明)が必要になることもあります。ご自身の会社、株主の背景がチェックされることもある、と覚悟をしておくのが現実的です。こうした観点から、株主構成や取引などは(特に最初は)できるだけシンプルかつ説明可能にしておくのが望ましいと言えます。

 
色々と書いて来ましたが、基本的にはシンガポールでの会社設立は極めて容易ですし、会社自体は維持費もそこまでかかるわけではありません。 うまくこうした難所を乗り越えて、シンガポールで会社を設立するメリットを享受できるようにしていきたい所です。

さて、シンガポールで会社を設立するのが有利なことはこれまでも色々書いてきました。(といってもまだまだ具体的な話しをかけていないので、これからどんどん追加していきたいと思っています) この記事では、シンガポールで会社を設立するに当たって、必要になる事項、要件をまとめてみます。尚、本ブログでは”会社”と言った場合には日本で言う株式会社に相当する”Private Limited”について述べています。

1)株主
株主は1人以上です!というと当たり前ですが、それ以上はありません。つまり、外国人だろうが、法人だろうが、個人だろうが、誰でも会社、Private Limitedが設立できてしまうのです。※ビジネスができる法人ということになると他にもパターンがありそうですが、私は詳しくないので。。。

2)取締役
誰でもなれます。但し、1人はLocal Director(現地取締役)である必要があります。会社設立時点でLocal Directorになれるのは、シンガポール国民、シンガポール永住権保有者、の何れかに限られます。※会社設立後、とある手順を経ると、日本人もLocal Directorになれます。私も自分の個人会社のLocal Directorになっています。それは追々。。。

 3)住所
シンガポール国内に会社の登記上の住所が必要です。多くの場合、後述するCorporate Secretary(会社秘書役)になるサービスが住所を提供しています。つまり、机も看板も何も無い場所に、登記上の住所を設定して、そこに公文書等が届くようにすることができます。シンガポールではオフィス賃料が極めて高いため、こうした”バーチャルアドレス”を使うのは非常に一般的です。

4)資本金
1ドルから可能です。但し、今現在、シンガポールの銀行はマネーロンダリングや脱税を防ぐため、法人向け口座開設に神経質になっており、資本金が低いと口座開設時の審査に通らない可能性が高まります。実際に、私の友人でも1万ドルの資本金で大手銀行から断られたケースがあります。(その後、増資をして他大手銀行で無事に開設できました。二人でハラハラしましたが。。。) お勧めは、3万ドル以上、可能であれば5−10万ドル用意しておくとベストです。

5)会社秘書役(Corporate Secretary)
この役職は日本にはありません。司法書士と監査役を足したような役割、とでもいいましょうか。会社の書類(議事録等)を作成し、保管、登記をする役目を担います。会社秘書役は必ず任命しなければいけません。法律・会計等、現地の実務に精通していないと行けないため、会計士や弁護士を要する、Secretarial Firm(秘書事務所)、会計事務所、法律事務所を雇うのが一般的です。

6)監査
シンガポールでは、一定の基準以上の会社は監査を受けなければいけません。2015年6月末までに終了する会計年度では、売上500万ドル以上または法人株主がいるまたは20人以上の株主がいる会社、となっています。2015年7月以降に開始する事業年度は少し緩和される予定です。監査対象となった場合には、株主総会にて監査人を選任することが必要となります。

少し長くなってきたので今回はこの辺で。次回は、この要件を見た時に、外国人(外国法人)として会社を設立する際の心配点について書いてみます。
 

シンガポールで会社を設立するメリット、その2です。本当にキリがなくなりそうですが、書けるところまで書いてみます。今回は、地理・ロケーションを見てみます。

シンガポールはマレー半島の先端にあり、小さな国でありながら地理的要衝となっています。
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(出典:グーグルマップよりキャプチャ)

シンガポールの地理的重要性は幾つかの視点から分解されますが、一つ目は間違いなく海運でしょう。中東からの原油輸送を始めとして、シンガポール・マラッカ海峡は大動脈です。シンガポールに港湾が発達し、多くの海運企業が拠点を持つのもごく自然なことと言えます。

二つ目は空路、各所へのアクセス時間の短さです。ASEAN各国の主要都市に飛ぶにも、シンガポールからは全て直行便で飛ぶことができ、フライトは長くても2−3時間です。クアラルンプールやジャカルタのように近い都市は1時間程。シンガポールから各国・各都市を非常に簡単にカバーできるため、必然的に、グローバル企業はシンガポールに拠点を設け、そこからアジア各国を統括することとなります。

三つ目に、時差の少なさも挙げられるかも知れません。シンガポール政府は意図的にシンガポール時間を中国時間に合わせており、シンガポール⇔中国間のビジネスを応援しています。またアジアのへそと言える位置にあるため、各国との時差も少なく、ストレス無くアジアを俯瞰しながらビジネスが行えるのです。

こうした戦略的なロケーションにあるシンガポールは、多くのビジネスを招き寄せ、ビジネスニーズを広く満たせる都市になっています。例えば海運、空運といったBtoB、多くの格安航空やエンターテイメント(典型的にはマリーナ・ベイ・サンズやカジノ)といったBtoC、他にも数えきれない程のビジネスが、地理的優位性を享受しています。そして、そうして集まった企業をターゲットに、更なるビジネスがおびき寄せられ・・・とネットワーク効果を発揮しているのがシンガポールなのです。 

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