シンガポール会社設立.com

シンガポールでの会社設立、運営、その他日々の生活について書くブログです。

2018年10月

前回のシンガポールEP事情からかなり時間が経ちましたのでアップデートです。基本事項は前回記事をこちらからご確認下さい。

シンガポールでのEP取得、最近どうなの?

EP取得の現状ははっきり言って「極めて厳しい」です。
2015年頃(与党が議席を減らしたタイミング)からかなり大きく方向性が変わったことは前回記事でお話したとおりです。そこからさらに、取得へのハードルが上がったと言って差し支えないかと思います。具体的に起きていることを見ながら、今の状況を整理します。

民族によっては普通にはEPが取れない!

国によってはそもそもEPが出ない、ということがあります。シンガポールでは民族のバランスを取るため、特定国民/民族が増えすぎないようにコントロールされています。そのため、流入の多いインド系はEP取得が難しく、逆に全体としてもっと必要な中華系民族は取りやすい、という状況にあります。耳にしたところでは、インド系は12,000ドル以上の月収がないとEPが出ない、とも言われています。※12,000ドルはおよそ月100万円、ボーナスや手当 は含まれない固定月給で100万円というと相当な高給取りですよね。既に多数いる民族については、高給が取れる特別な人材しか入ってきてほしくない、というのがシンガポール政府のメッセージなのです。

幸いに日本人については民族バランス的にそこまで厳しい状況ではありませんが、4万人を超える日本人が住んでいる状況からすると、日本人向けのEPも間違いなくタイトになっていると言えます。シンガポールが求めている、高度な技術をもたらす人材/事業であれば厚遇されそう(EPが出やすい)と言えますが、そうでない場合(例えば、ローカル人材で賄えそうなりテールビジネス)はどうやってEPを得るか、戦略的なアプローチが必要です。

EP有効期限でも安穏としていられない!

これまでは、申請→取得→更新・・・と続くプロセスにおいて、最初の取得と更新が難しい、ということがありました。そこに加えて更に、”監査”が入るケースが多発しています。具体的には、取得したEPの有効期間内に、MOM(Ministory of Manpower、日本で言う厚生労働省)から雇用実態や事業実態のチェックが入るようになっています。

こうした監査においては、
  • 雇用と勤務の実態
  • 会社の財務状況
  • 会社の事業実態
といった点がチェックされています。シンガポール政府としては、本当にシンガポールにいて、良いビジネスをしているのかどうか、シンガポールに貢献しているのかどうかをチェックしている、と思われます。

シンガポールでEP取得、滞在/移住は難しい?

簡単ではないのは確かです。ただし、アピールできる要因が様々あるケースでは、むしろスムーズにEPが取れているケースも散見されます。例えば以下のような要因です。
  • ビザ取得者の給与
  • ビザ取得者のバックグラウンド
  • 会社のシンガポール貢献度合い(事業的なもの、財務的なもの、雇用的なもの)
こうしたポイントを押さえて、計画的にEP申請、MOMとの交渉をすることでEP取得の可能性は高められます。いくら外国人労働者を招き入れにくくなったとは言え、シンガポール政府は労働力が不足しているとの認識があるため、必要な労働者にはEPを出すのです。

現在のシンガポールビザ取得における注意点

これは、当社にご相談下さい。笑
といういつもの(?)冗談はおいておいて、まずちゃんとしたプランニングが必要です。過去・現在のEPの状況を加味して、またアプリカント(ビザ申請者)の状況、会社の状況を正確に押さえた上で、計画を立てます。何を言うべきで、何を言うべきでないか。言ってみればMOMに対するプレゼンのプランニングです。

一言で言えば、「何故このビザ申請者をシンガポールに招かないといけないのか」をシンガポール政府の立場に立って考える、そしてシンガポールが受け入れやすいよう、コミュニケーションを設計する、ということが必須です。

また、とにかく早く、というオーダーが多いのですが、早く通したいのであればより多くの情報から、厳選した情報を準備することになります。難しい状況での申請になるため、緻密に準備し、申請をすることが必要です。(なので、当社でも考えることが多く、申請だけ出していればよかった時代に比べると負荷の高いプロセスになりました。楽はできません!)

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シンガポールは低税率で知られています。そうした税制のメリットを享受するにも、きちんと各種の税務申告を行う必要があります。本記事では、当社ではシンガポール法人の税務を主にお手伝いしているため、法人に関係する主な税務手続きの紹介と、基本的なサイクル(年間にいつ手続きをする必要があるか)についてお話していきます。最後に個人の税務についても追記します。※本ブログではわかりやすさを重視しており、様々な例外や条件によって変わるポイント全ては記述しておりません。その点、ご了承ください。

1)シンガポールの法人税

年に1回、法人税を申告する必要があります。シンガポールの場合、税率は最高17%であり、更に諸々の制度を利用するともう少し税金が下がったりします。実効税率が35%程ある日本と比べると相当安い上に、税免除や税金を納めてくれた企業にキャッシュバック(!)まであったりします。

シンガポールの納税は電子的に行える(要はネット上で行える)ように全てが準備されています。この政府の税務申告のサイトから、以下の手続きを行います。
  1. ECI(Estimated Chargeable Income)の申告
  2. 本申告(いわゆる法人税の申告)
  3. Notice of Assessment
1のECIとは、決算後3ヶ月以内に申告をし、その申告に基づいて納税を行います。ただし、これはEstimatedとついている通り”正式確定前の利益”に基づいて申告することが可能になっています。監査法人の監査が必要な場合、監査が終わるまで正式な利益額が確定せず、また監査は3ヶ月以上かかるのが通例なのでこのような手続きになります。尚、ECIは利益が出ていない(赤字)会社は免除されています。

2の本申告は、翌年の11月末までに申告を行います。例えば、2018年12月決算の場合、2019年11月まで、と覚えておくと間違いが無いです。この申告は休眠でも赤字でも必要です。会社の大小等々の基準により、申告のフォーマットが異なります。

3のNotice of Assessment(NOAと略されることが多いです)は、シンガポール税務署(IRAS)が申告を受け取って精査した後、正式な納税額を通知するものです。このNOAに基づいて、納税することが必要になります。ECIと差額がある場合はその差額の納税/還付となります。

2)源泉徴収税

海外への支払い等をする場合に注意が必要なのが源泉徴収税です。これは中々に状況による、ケースバイケースなので一概には言いにくい税務です。。。我々もひとつずつお話を伺ってから、何を・どの形で申告し・いくら納税するか、検討します。

よくあるケースでは、シンガポール法人のダイレクター(取締役)が日本に居住しており、シンガポール法人から日本在住ダイレクターに報酬を支払う場合です。シンガポールで役務(要は仕事)がなされたと判断されるときには、シンガポールで源泉徴収をして納税する必要があります。

サイクルは毎月となっており、こまめに申告・納税をする必要があります。税率は内容により様々ですが、15-22%となることが多いです。

3)消費税

シンガポールでは消費税はGSTと呼ばれ、7%です。シンガポール法人のうち、直近4四半期(12ヶ月)あるいは暦年(1月〜12月)で国内売上が100万シンガポールドルを超えるとGST登録が強制されます。GSTの申告と納税は3ヶ月に一回(四半期に一回)となっています。

このGST登録が必要かどうかの判断タイミングや、国内売上が100万シンガポールドルを超えると強制、という部分が知られていないケースがあり、後々になって大問題になるケースがあるので注意が必要です。

4)個人の所得税

個人の所得税は最高で22%、ただ累進課税なので所得により税率は大幅に変わります。例えば、所得が1000万円の場合、約7%、2000万円の場合12%程になります。日本と比べると相当に安いです。

申告は日本とあまり変わらないスケジュールで、歴年ベースでの申告で、翌年4/15までとなっています。個人での申告が必要なケース、不要なケースは色々場合があるため、属する会社や会計事務所等に確認することが必要かと思います。

尚、個人で投資をした収益については課税されないことが多く、こうした点でもメリットが大きいです。※FXなどで毎日のように取引をしているケースでは、投資ではなくて”本業”とみなされ、課税されることがあります。

5)シンガポールで税金関連の違反をすると?

今回は主に手続きについて書いてきましたが、税金関連の違反をするとどうなるか、ということについても知っておく方が良いかと思います。ちゃんと税務をやろうという気にもなると思いますので。

シンガポールでは、期限がすぎるだけで罰金となることが多くあります。税金もご多分にもれず、期限を過ぎて納税したりすると、罰金が課されます。ただ、軽微かつ初回の場合は税務署に交渉する余地があることもあるため、そうした状況に置かれた場合は専門家に相談するのが良いかと思います。

税金は安いですが、曖昧にして良いというものではありません。そこは日本もシンガポールも変わりません。きちんと制度を理解して、適切に申告・納税をすることが必要です。(当たり前ですが)


当社シンガ・カンパニー・サービスでは、主に中小〜大企業子会社の税務申告をサポートしております。顧問としてスキームのご相談も含め対応しておりますので、ご相談は本サイト右端のメッセージボックスから、あるいはメールにてお気軽にお声掛けください。

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